UNDERCOVER OFFICIAL ONLINE STORE

検索を閉じる。

高橋盾と西山徹と、『七人の侍』

2025.07.28



2025年8月にローンチするUNDERCOVERとWTAPSのコラボレーションプロジェクト「UNDERCOVER + WTAPS = ONE ON ONE」。今回のコレクションでは黒澤明監督による不朽の名作『七人の侍』を題材に、両ブランドがデザインしたTシャツを展開する。旧知の友人であり、過去に幾度もコラボレーションを重ねてきた高橋氏と西山による、日本映画とそのカルチャーの話。

『ファントム・メナス』をきっかけに
『七人の侍』と出合い直した

ー お二人は定期的にコラボレーションを行ってきていると思うんですが、今回なぜ黒澤明監督の『七人の侍』を題材に選ばれたのでしょうか。
西山(以下N) 2022年の「ONE ON ONE」がキッカケで、また一緒に何かやろうという話で。盾くんとは映画の話をよくするんだけど、相変わらず『七人の侍』を観続けてて、やっぱり最高の映画だよねって。
高橋(以下T) 『七人の侍』は、確か高校生の時に初めて観たのかな。その時はあの尺でモノクロでグッと入れなくて。でも大人になってしっかり見たらものすごいヒューマンドラマで、ちゃんと観てなかったのを後悔したんだよ。
N 「盾くんは99年の〈UNDERCOVER〉のコレクションでも『天国と地獄』を取り上げていたよね。」
T 「そうだね。」
N 「劇中の煙突から出る煙が記憶に残ってる。」
T 「そう。『天国と地獄』はモノクロの映画だけど、『ランブルフィッシュ』みたいに一箇所だけ色が入るシーンが印象的だったから、それをモチーフにしてTシャツを作った。その頃、黒澤映画を結構観てたんだよ。『赤ひげ』とかね。大人になってから観ると10代の頃とは映画への入り方の角度が違ったし、深いところまで行けたんだと思う。」
ー そのあと、2000年春夏の〈UNDERCOVER〉のコレクション「TEASER」を発表した際、ショーを打ち出すにあたってお二人が薫陶を受けた黒澤映画からのインスピレーションを盛り込んだわけですよね。今回のコラボレーションはそこから25年を経た現在の解釈でのアウトプットとなるわけですが、2000年当時どうして黒澤作品に注目されたんですか?
T 「その前の1999年に『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』が公開されたんですよ。もう衝撃で。小学校の時に観た『スター・ウォーズ』が大人になって新たに始まるだけでも驚きなのに、さらに前の時代を描いているっていう設定にびっくりして。」
N 「お祭りだったよね。」
T 「祭りだよ。その時にジョージ・ルーカスが黒澤作品に影響を受けたと知って、改めて『七人の侍』を見返して、ものすごく衝撃を受けた。日本の作品がアメリカの作品に影響を与えたことが日本人である自分には誇り高かったし、さらに当時は東京のストリートとアメリカが強くリンクしてた時期で。〈UNDERCOVER〉はその位置からは少し離れたところにあったんだけど、それを俯瞰で見ながらコレクションにしようと。さらに自分が作っているのはストリートでもあってモードでもあるので、そのふたつの要素も混ぜながら見せたい。アメリカ・日本の映画やカルチャーを全部ミックスして、自分フィルターでさらに映し出すという試みをやってみようと。」
ー 2000年前後の東京・原宿のシーンと、『ファントム・メナス』が産出された時代性と、それを包含する当時のアメリカの文化がリンクしたわけですね。
T 「そうだね。その間にお互い進化したよね。クラブで遊んでるときはみんな子供で、徹なんかただのスケーターだったし俺もただのパンクだったのに、仕事を始めてなんだかんだ原宿で集まるようになって、アメリカと繋がり出して。「TEASER」は、10年経ってその関係性を一回まとめようとした試みだったと思う。それぞれの活動の方向性がしっかりしてきて。」
N 「1990年代後半から2000年前半というのは、サブカルチャーやカウンターカルチャーからインプットしたことを、衝動第一で積極的にアウトプットしていた時期だったと思う。」
ー 今回選んだ『七人の侍』の魅力はどんなところにあると思われますか?
T 「数ある黒澤作品のなかでも、やっぱり自分のなかのベースにあるのは『七人の侍』なんです。人間を描いているというか。」
N 「人間の業というか、観ていると共感がある。」
T 「キャスト的には三船敏郎が主役だけど、7人の登場人物の性格や立ち居振る舞いがみんな違って、ものすごくいいバランスで物語に組み込まれてる。集められた侍が農民たちのために立ち上がるという設定とか散り方も素晴らしいし、そのすべてがグッとくるなあと思って。」
N 「登場人物それぞれの細かいキャラクター設定が、自分はものすごい感情移入してしまう。自分にとっての最高のエンターテインメント・ムービー。」
T 「そう。エンターテインメント性がすごく強いよね。作品自体は長いんだけど、でも無駄がない。描き方や流れはものすごいシンプルで、そのなかで極上のエンターテイメントをやってる。」
N 「少数精鋭の野武士と農民の姿に感情移入するしね。アンチヒーローという。」
T 「結末が分かっていたとしても、1人1人のキャラクターをじっくり眺めたり、農民とのやり取りで気持ちが1つになっていったり、その感じがたまらない。」

一週間着られる7種のデザイン

ー 今回の『UNDERCOVER + WTAPS = ONE ON ONE』はどんな内容になっているんでしょうか。
T 「月曜日から日曜日まで7日間分のTシャツということで、お互い3型ずつ作って、共通のビジュアルがひとつ。いろんなグラフィックで『七人の侍』を表現しています。大事にしたのは、やっぱりキャラクターをどう見せるかという点ですね。ただ僕はグラフィックデザイナーとしての徹のセンスを信頼していて、お世辞抜きでいちばんだと思っているので、すべてお任せ。徹が出してきたグラフィックをちゃんと服に落とし込もうと思いました。僕は自分が着るんだったらこうかなという感じで、写真を使いながらジャガードで表現してみたりして。」
N 「洗練されているよね、盾くんバージョンは。」
T 「どうかなあ。」
N 「自分のはどうかなぁ、、、」
T 「でもこっちから見ると洗練されてるなあと思うよ。」
ー コレクションビジュアルに登場するモデルの方々も年代が幅広いですね。
T 「次に繋げていきたいっていう気持ちがあったんです。これまで一緒に過ごしてきた人たちと、若い人と。なんとなくね。ちょっとそういうストーリーを作った撮影にしました。彼らも10年後、20年後、僕たちみたいな関係を作っていってくれたら面白いし。」
N 「これからの世代の人たちにも『七人の侍』、見てほしいね。」
T 「絶対感動するよね。友達だとか、人との関わり方とか、結構大事なことが詰まってると思う。」
N 「劇場で観ると一番いいんだけどね。」
T 「10年前ぐらい前にTOHOシネマズで『七人の侍』のリバイバル上映があって、観に行ったら感動した。15分くらい幕間休憩が入ってさ、その一回休む感じもめちゃくちゃ良くて。」
ー 西山さんが『ファントム・メナス』から改めて黒澤映画の凄さを再確認したように、何か別のきっかけとかがあったりすると入りやすいのかもしれないですね。
T 「そうですね。うちの子たちも『スター・ウォーズ』は結構観てるんですよ。でも日本の映画もちゃんと観てほしいよね。」

レンタルショップで
邦画に明け暮れた10代

N 「黒澤映画に限らず、昔から盾くんにはいろんな邦画を教えてもらったなあ。最近またあれ観たよ。お父さんとお母さんが幽霊になっちゃうやつ。」
T 「ああ、『異人たちとの夏』?」
N 「そうそう。大林宣彦監督の。ちょっと前に海外でリメイクされたね。」
T 「イギリスを舞台にね。あれ、原作は山田太一なんだよ。風間杜夫もいいし、(片岡)鶴太郎とか最高だよね。最後なんか変なホラー映画みたいになっちゃうんだけど。」
N 「登場人物が痩せていってね。でもいいよね、日本の映画って。」
T 「でも観ないよね、若い子。」
N 「確かに自分が小さい頃も観なかったからなあ。」
T 「俺はめちゃくちゃ観てたんだよ。小学校高学年くらいから松田優作さんがすごい好きになって。80年代頭っていい映画がたくさんあって。(内田)裕也さんもカッコよかったし。」
N 「ATG系(日本アート・シアター・ギルド。1961年から1980年代にかけて活動した東宝系の映画会社)の映画とかもそうだけど、名作が多いよね。」
T 「そう。そういうアンダーグランド系から角川映画までめちゃくちゃ観てきたよ。ハマっちゃって、レンタルビデオで借りて片っ端から観てた。」
ー 洋画も好きだけど、どちらかというと邦画を選ぶみたいな感じだったんですか?
T 「もちろん洋画も観ましたけど、圧倒的に邦画でした。僕が小さかった頃は映画館で同時上映をやってたんですよ。『AKIRA』が公開になったとき、高校卒業するか文化入ってるくらいのときかな、実家の方の映画館で見たんですけど、そしたら『となりのトトロ』が同時上映で。すごくない?」
N 「すごいね。大友(克洋)さんと宮崎(駿)さんを一度に(笑)。」
T 「『AKIRA』目当てで行ったのに、結果的に『トトロ』もめちゃくちゃ良かった、みたいな。そういう時代だったよね。あと一日中いれたじゃん。」
N 「そうそう。観客の入れ替え制がない。(上映時間の)途中から入っていいしね。」
T 「同時上映の組み合わせもめちゃくちゃで。1日中ずうっといる人いたもん。」
N  「自分も一度入ったらそのまま2回ぐらい観てたよ。」
ー まだネットがない時代ですもんね。今だとインターネットで映像作品に簡単にアクセスはできるけど、体験込みで映画を楽しむ機会が少ないのかもしれないですね。
N 「レンタルビデオショップに行くとかも体験の一つだよね。盾くん、(目黒区)大橋の『DORAMA』に行ってた? 『アートコーヒー』があったじゃん、東山に。その向かいにレンタルビデオショップ『DORAMA』があったの知らない?」
T 「えーあったっけなあ。あのへんに住んではいたけど。」
N 「多分行きつけは大橋の、山手通り沿いの『DORAMA』だったと思うんだよな。」
T 「じゃあ絶対そうだね。あの頃だったら行くもんね。それで延滞しちゃう。」
N 「「巻き戻してください!」とか店員さんに注意されてね。借りたVHSテープを、返却するときは巻き戻さなきゃいけないのに、つい忘れちゃって。あれで怒られるの嫌だった。」
T 「巻き戻すって何? って思うよね(笑)。それにしても店に行って、そこで選んで借りてくるってすごい時代だよね。」
N 「でもあの体験が良かったなあ。友達と一緒に行って、ビデオのパッケージの背表紙を見て悩んだりして。」
T 「でも、今の子どもたちも映画館には行くからね。その感覚がまだちゃんと残っているのは嬉しいなあと思うよ。」

高橋盾(たかはしじゅん)
1969年生まれ。ファッションデザイナー。文化服装学院に在学中の1990年に〈UNDERCOVER〉をスタートし、1997年に毎日新聞・毎日ファッション大賞新人賞、2001年に毎日新聞社・毎日ファッション大賞を受賞。2002年からはパリコレに参加。趣味で描いていた油絵の個展を2023年に東京で初開催。2024年10月には香港でも開催した。


西山徹(Tetsu Nishiyama)a.k.a. TET
1974年生まれ、東京都出身。WTAPSディレクター。
マガジンハウス出版、雑誌『POPEYE』にて『徹の部屋』を連載中。

発売日
2025年8月2日(土)

取り扱い店舗
UNDERCOVER青山MENS / 仙台 / 名古屋 / 金沢 / 京都 /心斎橋PARCO / UNDERCOVER NOISE LAB 渋谷PARCO
UNDERCOVER ONLINE STORE

(限定BOXセットの取り扱いはUNDERCOVER青山MENSのみ)

※UNDERCOVER青山店での初日のご購入には、公式アプリ会員限定の事前入店抽選が必要です。
公式アプリダウンロードの上、会員登録をお願いいたします。
抽選受付期間:7月29日(火)正午 ~ 7月31日(木)午前10時まで。